両手はね 好きな人を抱くためにあるんだ

両手はね
好きな人を抱くためにあるんだ

 38歳で大腸ガンを告知され、最期のときまで、子どもたちに生きていくために大切なことを語り続けた、高橋一二三さんの話。
 亡くなって数年経ってから、長男がお母さんに話してくれました。「お父さんが教えてくれたの、ぼくたちみんなにね。お父さんベッドで手を出して、両手は何のためにあると思うかって聞くの。ぼくたちはボールを受けとめるためとか、ご飯を食べるためとか言ったけど、お父さんは、みんな合ってるけど、みんな違うって。両手はね、好きな人を抱くためにあるんだ。だけど、体だけを抱くんじゃない、心までしっかり抱くんだって。
心を抱きしめたいくらい好きになれた人でなければ結婚なんかしちゃ駄目だって。
お父さんはお母さんのこと、ほんとうに好きだから、心まで抱くんだって言ってたよ」 4人の子どもたちは、相談したいことや困ったことがあると、今でも近くにあるお父さんのお墓に行って、お父さんに相談するという。            
                         「壊れる日本人」柳田邦男より

 もし、一つだけしか、子どもにしてあげられないとすれば、私は迷わず、「無条件の愛情を示してあげる」とこたえます。
 なぜなら、子どもは愛情を感じるために生まれてきたのだから。